魔王家
―年末―

「魔王様、ご卒業後はどうなさいますか」

「アイドルになるよね?」

学業が嫌いな魔王はアイドルの道を選択するだろうとアーサンは思っていた。

今までの魔王なら確実に。

「もちろんアイドルになるのじゃ。売れっ子じゃぞ」

と。

現実は違った。

「アイドルもよいが、若大将というのもよくないか?世界を震撼させたいのぉ」

アーサンは驚き、メイヤは冷静に話を聞いていた。

事実上、魔王が『魔王』として世界に宣戦布告することを言っている。

「では今から卒業後すぐ宣戦布告出来るよう準備しておきましょう」

「ちょっと待って二人とも!焦っちゃ駄目だよ。もえちゃんはまだ若すぎる」

アーサンがそう言うのも無理はなかった。

通常『魔王』の宣戦布告は三十歳まで色々経験し、行う。
その後に現れる勇者によって倒されるのだ。

ちなみに勇者の出現は魔王の宣戦布告後になるため、魔王の寿命も勇者の出現時期によって違う。

百年以上君臨する魔王もいた。

逆も然り。

「アーサン、もえなら出来ると思わないか?」

「それは……」

この時アーサンは一つの予感めいたものが胸をよぎっていた。
< 71 / 152 >

この作品をシェア

pagetop