魔王家
19歳
―特設スタジオにて―

魔王は漆黒の衣に身を包み、アーサンとメイヤと共にスタンバイしていた。

「もえちゃん何を着ても似合……」

「魔王様、こちらが今日読まれる宣言書となっております」

アーサンを無視して、メイヤが宣言文の書かれた紙を渡す。

今は便利な時代でどこからでも映像を世界へ配信出来る。

「それでは始めましょう」

メイヤの合図でカメラの前に立った魔王は宣言文を読み始める。

「余はこの世界を新たに支配する魔王である。先代魔王が倒され、十八年の短い間貴様ら人間は一時の平和に歓喜し、暮らしていたことであろう。それも今日までじゃ。絶対の恐怖の名の元にこれから余が世界の頂点に立ってくれようぞ」

魔王は映像越しでも分かるほどの威嚇とも畏怖とも殺意とも取れる念を込めていた。

これを見ていた人間達はある者は泣き叫び、ある者は絶望し、ある者は萌え、ある者は驚いた。

魔王が倒され、次の魔王が現れるまでは歴史的にみてもまだ時間はあるはずだったから。

逆に魔族達は新たな魔王の誕生に打ち震えていた。

(アレンも見ただろうな)

魔王の小さな心苦しさ。

(これでやっとじゃな……)

メイヤに乗り移っているマーサの狙い。

(もえちゃん可愛い……)

魔王マニアのアーサン。

それぞれの思惑が交錯した魔王の宣戦布告は終わった。

(もえじゃないか！)

世界でこの宣戦布告を見ていない者はいない。




修得：なし
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表紙・目次

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