魔王家
魔王も自室で作業をしていた。

「ダンジョンの罠配置や宝箱設置も結構難儀じゃなぁ」

世界中に点在するダンジョンを自分色に染め直し、いずれ現れるであろう勇者への試練を作るのも魔王の立派な仕事。

この数々のダンジョンをクリア出来る勇者が魔王の前に対峙することを許される。

クリア出来ない勇者が続出すると、魔王が君臨する期間が伸びるということだ。

ちなみにダンジョン構築マニュアルがあった。

「ワンフロアーに宝箱は三つまでか……」

頭を抱える魔王。

「即死系の罠もダメなのか……」

さらに悩む魔王。

「ボスは二人まで……あー!誰がこのマニュアル考えたのじゃ!」

机に座って勉強などをするのが好きではない魔王は慣れないデスクワークにキレながら、マニュアルをひっくり返す。

裏表紙にはバッチリ制作者名が書いてあった。

『ドレイク・ド・マーサ』

初代魔王だった。

「初代はアホか。制約の多いマニュアルなんぞ作りおって」

ぶーぶー文句を言いながらなんとか作業を進める。

「アイドルにしておればよかったかな」

魔王は自分で決断したとはいえ、早くも後悔していた。

「だから言ったのにー」

アーサンが扉の隙間から呟く。

ファインダー越しに。

「今まで覗いておったな」

魔王はわなわなしている。

「ぶーぶー言ってるもえちゃん可愛かったよ」

「見ておったのなら手伝え!」

こうして夜は更けていく。

「ギャー!僕のカメラが……」




修得:ダンジョン構築術
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