魔王家
「魔王様もう大丈夫ですよ」

椅子の上に体育座りの形でガタガタ震えていた魔王はようやく安心した。

「魔王様は何故ゴキブリをそんなに恐れられるのですか?こいつが魔王様に何かしましたか?」

「黒光りした」

質問の答えになっていない。

それよりこれはメイヤにとって想定外の解答であった。
『何もしておらぬが怖いのじゃ』くらいを想定していたのだ。

それでも負けずに続ける。

「魔王様も同じですよ。何もしていなくても『存在』こそが人々に無自覚、無根拠に恐怖を与え、たとえ倒される存在だとしてもそれは変わりません」

メイヤはこの状況をうまく使った渾身の説明に、してやったりの表情だった。

「魔王様分かりましたか?」

魔王が下を向いている。

「もえはゴキブリか……あれと同じか……」

この時、メイヤは魔王から今にも黒光り出来そうなくらいの暗いオーラが見えていた。

「魔王様、魔王様、そ、そんなに落ち込まないで下さい。魔王様はゴキブリより怖い存在ですから」

慌ててフォローすると大抵墓穴を掘る。

「ゴキブリの次か……」

深みにハマったメイヤ。

必死にフォローすること一時間、メイヤは穴を掘り尽し燃え尽きた。

魔王はわざとメイヤをいじめていただけで、してやったりは魔王の方だった。



修得:存在意義
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