魔王家
二人は元気よくダンジョンを出た。
一人を引きずりながら。

「あのボス、もえより強そうじゃったの、見た目だけは」

魔王一行は洞窟型のダンジョンを抜けて帰路につこうとしていた。

ボスの方への挨拶後、キーアイテムを渡し、裏口みたいなとこから脱出したのだ。

「あの威喝さは図々しいほどに強そうでしたね」

今抜けてきたダンジョンのボスは、魔王の三倍はあろう体格に全身を凄い筋肉で覆われていた。

「もえにビビッて足が震えていたがな」

そんなボスでもビビるのは仕方がない。

あのエグい罠を考え出す魔王の非道さには血の気も引くだろう。

三十分前。

ダンジョン内で魔王はアーサンにそこを歩けと、あるポイントを指定し歩かせた。

「何があるの?」

即死系の罠はない。

それを知っていたせいで、アーサンはエグいと言っても大したことはない、と高をくくり普通に歩く。

落とし穴に落ちた。

「もえちゃん何、この白く粘つくもの」

落とし穴自体は結構ベタな罠だが、中にはその白く粘つくものがびっしりで、アーサンはそれを頭から被る形になる。

「山芋」

それを聞いてメイヤが、口に手を当て憐れみの目をアーサンに向けた。

暫くしてアーサンは自らを傷つけだした。

あまりの痒さに。

これを見ていたボスは身の気がよだつ思いをしたのだった。

痒さのあまりに気を紛らわすため、掻きむしり過ぎで自らを傷つける。

そして全身を襲う痒みによる精神崩壊。

実に合理的かつ残虐極まりない。

外に出てからも、アーサンはズルズル引きずられていたが、とても気持ち良さそうだった。

痒みはまだ続く。




修得:非道さ
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