魔王家
「勇者らしき人物が現れているらしい」

メイヤのこの言葉の意味は、アーサンにもショックを与えた。

「え……もう……」

勇者が現れたということは魔王の仕事が近づくということ。

「でも、らしき人物なんだろ?」

アーサンが言うように、誰でも彼でも勇者になれるわけではない。

「そう、らしき人物だよアーサン。でもそれはあくまでダンジョンからの報告の時点までだ」

メイヤが報告を受けた時点で、既に『らしき人物』は勇者だと断定されていた。

メイヤとアーサンは勇者に成りうる人物を知っていたから。

「いくつかのダンジョンからの報告による外見的特徴が、ある人物と一致している」

そこまで聞けば、その『ある人物』が誰であるかなんて、外見的特徴を聞かなくてもアーサンには分かった。

「アレン……か」

魔王の初恋の相手を調べた時に、その相手がアレンであることを突き止めた二人。

しかし、そのアレンは七代目を倒した勇者の子供であったことが分かった。

「やっぱりあいつが現れたのか」

勇者の家系であるなら魔王が現れた今、勇者として旅に出るのは当たり前だった。
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