魔王家
「メイヤ、このことはもえちゃんに報告しないといけないよね?」

勿論、こう言った事柄は部下として報告の義務がある。

「アーサン、報告してもいいのか?」

報告すれば魔王は動揺し、どのような行動を取るかわからない。

「情報操作も大事な戦略だ」

メイヤのこの言葉は、魔王を思う気持ちから報告する気がないというのと、魔王を最後まで『魔王』として行動させるために報告しないという二つの思いがみてとれた。

アーサンもこの残酷な運命を魔王に知らせたくはないからとメイヤに賛成した。

いつかはバレることではあるが、それはその時、つまり魔王と勇者が対峙した時に二人が解決することである。

「勇者なんていなければいいのに……」

アーサンのこの言葉は本心だった。

魔王にとっての余命宣告のような勇者出現の報告は、二人を憂鬱にさせる。

魔王自身がこの報を聞けば、なおのことだろう。

二人は魔王を大好きで魔王を死なせたりはしたくない。

しかし、魔王としての仕事も全うさせなければならいという板挟みの状態が辛かった。

「とりあえず報告にいこう」

メイヤがアーサンを促す。

「『本日も異常なしです』と」
< 91 / 152 >

この作品をシェア

pagetop