魔王家
―世界の様子―

魔王が宣戦布告をして三年目。

「本日も魔王は、平和に世界を支配しております」

ニュースでは今日も変わらぬ魔王情報が流れている。

「顔写真が気にいらん」

ニュースを見ている魔王は不機嫌だ。

宣戦布告時は、邪悪な心に満たされていたので、それなりの雰囲気の顔をしていたからである。

「後でニュース用に撮り直すようメイヤに頼んでおくか」

魔王は未だ、アイドル志望だけあって顔写真の写り方にはうるさかった。

魔王情報の後には、各地の極悪魔族による犯罪情報が流れる。

魔王が君臨することで人々が恐怖するのは、この極悪魔族による犯罪増加があるためである。

現魔王は魔族に対して、ダンジョン管理以外は特に指示を出していない。

魔族が好き放題やっているというわけだ。

「今日も凄い犯罪が起こっておるのぉ」

魔王はお茶を飲みながら呑気に見ていた。

あくまでも魔王は『魔王』であるので、魔族の犯罪をどうこうするつもりはない。

世界の秩序を乱すことはあっても、命令することで秩序を保つようなことはしないのだ。

なので人々は魔族の頂点『魔王』が君臨することを忌み嫌い、恐怖の対象としてみるのである。

魔王自身は今日も至って平和に過ごしていた。
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