傷、のちに愛



私たちはほぼ同時に振り返った。

「小早川先生!」

絵美は驚きを隠せない様子で相手を見た。

風になびく彼の長い前髪となにを考えているのかわからない表情が、授業のときの雰囲気と違う。
うっすら色気を感じてしまうような、妖しい微笑みを携えて彼は話し出した。

「悪いけど、今から研究室まで来てくれないか?」

私は、思わず絵美の陰に隠れてしまう。

コワイ

そう思ったからだ。

「あ〜…、小早川先生。この子ちょっと人見知りだから…」

「…じゃあ昨日の話の続き、ここでしてもいい?」

私を挑発するような、目。

私は彼に従うしかなかった。



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