傷、のちに愛



当たり前のようにそう言い話つ彼。


…だったらなんで呼んだ訳?

私は苛々する気持ちを抑えて話した。

「じゃあ帰ります」

私は立ち上がり、そのまま研究室をあとにしようとした。

「――っ、待てよ!」

そう言い、私の腕を掴んできた。

―――――!

「…いやぁっ!」

男の人の肌の感触に全身が粟立ち、私は悲鳴に近い声を上げる。

すると彼は慌てて手を離し、私の様子をただ見ていた。

肩で息をし、涙ぐむ私はきっとただの過剰反応な女にしか見えないはず。

は…早く、逃げなくちゃ――…



.
< 20 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop