傷、のちに愛
「……何かあった?」
しゃがみ込んでいる私と目線を合わせるように屈み、そう尋ねてくる彼。
――答えられるわけがない。
私に苦しみを与えた“男の人”になんて、言えるわけがない。
「なにも…ない」
こう答えるのが精一杯だった。
―――しばらく沈黙が続いたあと、口を開いたのは彼だった。
「和葉ちゃん、…俺のそばにいなよ」
…は?
私は、いぶかしげに彼に視線をやった。
「いや、その…」
彼は慌てたように口ごもり、なんとか言葉を続けた。
「…とりあえず、帰ろうか?送るよ」
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