傷、のちに愛



―――なんでここがわかったの?

私は、頭を上げることもなくその場にいた。

顔も見たくない。
…小早川千秋の顔なんか。


「顔、上げてよ」

「……」

「じゃ、逃げないで聞いて?」

そう言うと、彼はベンチの端に座った。

「…さっきの返事は本気だよ。俺、和葉ちゃんと付き合いたい」



―――風がざぁっと巻き上がる。

なにを言っているんだろう。

私にその資格なんてないのに。

恋なんてしたくないのに。

恋なんて、できないのに。



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