傷、のちに愛
【Side:千秋】
―――――
―――
和葉が去ってから、俺は学食で待たせていた彼女の友人・鈴木絵美の元に戻った。
さすがに学食に居づらくなったのか、入り口付近で俺を待っていたようで、俺を見つけて一目散に走ってきた。
「先生!…和葉は」
「…逃げられたよ。泣かれた」
俺は彼女と少し離れたベンチに腰掛け、口火を切った。
「あいつは、なにを抱えてるんだ?」
「…ごめんなさい。それは私からは言えない」
小さな声はすぐに学生の笑い声にかき消され、辺りに漂って消えてゆく。
そりゃそうだ。
和葉だって、この子が口が堅いことを知っているから話してあるんだろう。
.