傷、のちに愛
俺は、ふと彼女に尋ねる。
「だったら…なんで鈴木さんはあんなこと言ったの?」
“和葉の彼氏に”。
「……先生なら、和葉を助けてくれるかなって」
彼女はそう呟き、空を見つめる。
「和葉、あんなんじゃいつか壊れちゃう。全部受け止めて包んでもらって、傷が癒えなきゃいつか…」
それ以上は言うことができなくなったのか、口をつぐんで俺に視線を移した。
「そのつもりだよ。あっちに嫌がられなければね」
俺は彼女に向かって力強く答えた。
「和葉、意地っ張りだから…でも、よろしくお願いします」
そう言って、鈴木絵美はベンチから去っていった。
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