傷、のちに愛
…絵美から聞いたんならまぁいいか。
「大丈夫ですよ。今アパートにいますから」
『ならよかった。……』
そう言ったっきり、彼は黙り込んだ。
「どう、したんですか?」
私は思わず尋ねた。
『いや…、声が近いから。もっと聞きたい』
私の顔はにわかに暑く火照った。
「な、なに言って」
『もっと』
「…切りますよ」
『えっ!もうちょいいいじゃん』
―――プッ!
私は思わず吹き出してしまった。
慌てた様子がなんだかおかしくて、その姿まで想像してしまう。
『笑った声、かわいい』
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