傷、のちに愛



アパートを出て少し経ったとき、向こう側から声をかけてくる人がいた。

「和葉ちゃん!」

二宮くんだ。
二宮くんは、私の方へ小走りに近寄ってきた。

私は思わず身体を固くする。

「アパートこのへんなの?」

私はこくんと頷いた。

…やっぱ男の人は怖い。

「そっか、俺んちあそこなんだ。偶然だね」

そう言いながら、二宮くんは道路向かいのアパートを指さしている。

「そうなんだ」

「もしかしてスーパー行くところだった?俺もなんだ。一緒行かない?」

えっ!
なんでそんな展開になるの?

どうしよう。

顔を上げると、二宮くんはにっこりほほえんだままだった。

「はい……」



.
< 59 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop