傷、のちに愛
アパートを出て少し経ったとき、向こう側から声をかけてくる人がいた。
「和葉ちゃん!」
二宮くんだ。
二宮くんは、私の方へ小走りに近寄ってきた。
私は思わず身体を固くする。
「アパートこのへんなの?」
私はこくんと頷いた。
…やっぱ男の人は怖い。
「そっか、俺んちあそこなんだ。偶然だね」
そう言いながら、二宮くんは道路向かいのアパートを指さしている。
「そうなんだ」
「もしかしてスーパー行くところだった?俺もなんだ。一緒行かない?」
えっ!
なんでそんな展開になるの?
どうしよう。
顔を上げると、二宮くんはにっこりほほえんだままだった。
「はい……」
.