傷、のちに愛
「……お前、学部と名前は?」
彼はたばこを片手に、整った顔をさらに美しく歪めながらそう尋ねてきた。
「…経済学部経営学科、島貫和葉」
やっと口が開き、それだけ伝えたところで我に返った。
「島貫和葉。…俺、なんだかお前が気に入ったよ。またな」
それだけ言い、私の頭をクシャッとなでて彼はきびすを返した。
―――たばこに混じった香水の香りだけを残して。
「あっ、和葉!」
しばらくして私を捜してくれていた絵美が駆け寄ってきた。
「ごめんね!って…なんか、顔赤いけど?」
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