傷、のちに愛
私はそのまま二宮くんの腕の中に閉じこめられてしまった。
―――逃げられない力強さとその腕に、私の頭の中ではサイレンが鳴り止まない。
だめ
逃げなくちゃ
こわい
こわい
たすけて
“和葉”と、私を呼ぶ低い声。
私の脳裏を一瞬かすめていった―――
「―――ぃやあっ!」
そう叫び、私はなんとか逃げようともがいた。
だけども逃げることができない。
二宮くんは少し驚いているが気にする様子がない。
「ごめん。でも…和葉ちゃん、俺…和葉ちゃんの彼氏になりたいよ」
耳元で囁かれる声。
私は、それどころではなかった。
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