傷、のちに愛
―――ガタンッ!
ドアに何かがぶつかった音がした。
磨り硝子に一瞬映ったシルエットに、俺は血の気が引く思いだった。
遥をはねのけ、その人影を追いかける。
「―――和葉!」
しかし和葉は止まらなかった。
…俺の掌から滑り落ちるように行ってしまった。
「あーあ、行っちゃった」
この一言で、俺はすべてに気づいた。
つかつかと遥に近づき、その長い髪を掴む。
「ちょっ…痛いじゃない!」
騒ぐ遥にお構いなしで、俺は警告した。
「…次に顔を見せたら、ただじゃ済まさないからな」
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