傷、のちに愛
9:求め合うように
「和葉、…落ち着いた?」
私は今、絵美のアパートにいる。
あのあと、授業が終わった頃を見計らって絵美に助けを求めた。
絵美に一通り話をすると、絵美は私の手を引き自分のアパートに連れてきたのだ。
そして、こう言いながら泣きはらした私に冷たいタオルを渡してくれた。
「ん。…なんとか」
本当は、あの光景がずっと頭から離れない。
――なにもしていないのに失恋しちゃうなんて。
やっぱり私にはもう恋なんてできないんだ。
特大のナイフが私の癒えかけた心臓にどっかりと刺さってしまった。
「絵美」
「ん?」
「私、やっぱりもう恋はしないよ」
絵美の表情が曇ったが、私はまた涙が溢れてきて見えなかった。
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