傷、のちに愛
それから数分後、絵美の家のチャイムが鳴った。
絵美が玄関に出ると、私はまた泣きたくなった。
悪い方にしか想像できなくて、壊れてしまいそうで、逃げ出したくてたまらなかった。
「…和葉!」
私の姿をとらえて、私の名前を口にする千秋さん。
あれだけ聞きたかったその声も、今は私の不安を増幅させてゆく。
私は、返事をすることもなく玄関へ向かった。
「行ってらっしゃい」
絵美が笑顔で見送ってくれた。
…うん、行ってくる。
私は千秋さんのあとを追い、車に乗り込んだ。
このまま千秋さんの家に行くらしい。
私は両手をぎゅっと握り、心を落ち着かせようとした。
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