傷、のちに愛



私は、卑怯だから。

顔を見たら泣いてしまいそうだから。

だから運転している間に言ってしまおうと思います。

「私、言いたいことがあります」

しばらく信号が青になる気配がない。
…今が唯一のチャンスだろう。

「えっ?」

千秋さんはいきなりのことに疑問の声を出す。

私は、そんな彼にかまうことなく続けた。

「…好き、です」

私はまっすぐ前を向きながら告白した。

「ごめんなさい。でも、顔見たら…」

―――ぽたっ。
ぽた、ぽたっ。

泣かないで言いたかったのに、もう手遅れだった。

私は大粒の涙で頬を濡らしていた。



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