爽やか王子と内気少女
「永井さ…」
俺に気づいた西川が小さな声で話かけてきた。
「あんた、香が好きでしょ?振るとか何考えてんの?」
西川のストレートな言葉に目線を下へ落とした。
「俺は…新垣に頑張れって言えなかった…」
「は?」
「放送部に入るって…自信持てる様に頑張るって言ってた時、応援できなかったんだ…」
「なんで…」
「新垣が頑張るほど、新垣の声は色々な人の耳に残る…皆が心を動かす…
そんなの嫌なんだ……俺が新垣の声を一番に聞きたいから……誰よりも聞いてたいから……
新垣を好きになるほど独占したくなるんだ。
特技を見つけた新垣は凄い輝いてる。でも俺は置いて行かれそうで。
だからって手を延ばせば新垣の足を引っ張る」
「あんたの寂しそうな顔って、それだったの?」
「始めは俺の想いから逃げる新垣が寂しいかった…
でも、今は新垣の足を引っ張りそうな自分が寂しい…」