誘う手の群れ
「キメェぞ! 早く帰ろうぜ!」


昌人が言う。


「いや、もうちょっとだけ中に入ってみよう」


そう言うと輝彦は懐中電灯を前方に向けて歩み始めた。


「もう少しだけだぞ!」


昌人はそう言うと輝彦の後につづく。

足許の蟲たちを目撃してしまったからには、一刻も早くこの洞窟から出たかったが、輝彦を置いて帰ってしまっては、輝彦から「ビビってる」と嗤われてしまう。

気のせいか足許からブチブチと音がするような気がする。

おそらくは足許の蟲を踏み潰す音なのかもしれないが、それだけ神経が過敏になっているのかもしれなかった。
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