氷菓少年は天然少女にかなわない
つかつか梨久の座るベンチまで歩み寄りそのまま、梨久の隣に腰をおろす。



「オレに何かあると昔からすぐ飛んで来るよね、はるって」

「そういう時すぐいなくなるし、梨久が辛い事辛いっていわない性格って知ってるし、幼なじみとしては心配するでしょ?」

「はるの場合は心配性じゃん。まあ、はるだけがオレの女嫌いの理由知ってるから仕方ないけど」



女嫌いである理由の真相を知るのはこの幼なじみだけで、梨久本人が話したわけではなく、そこが春夜の情報網のすごさだった。



「笑佳ちゃんは信用してもいいんじゃない?少なくとも、あの子は他の子と違うと思うし」

「信じる信じないの問題じゃない。……オレが嫌なんだよ」

「梨久の気持ちはわかる。でも、笑佳ちゃんの気持ちもわかってあげなよ。あの子も、梨久の事探しに来ようとしてたんだからさ」



梨久は黙ったままベンチから立ち上がる。春夜が座ったまま何も言わないでいると、梨久が一言だけ言った。



「また来てくれてありがと」

「いーえ」



校舎に向かって歩き出す梨久の背中をあとから春夜が続く。



黒宮にこのあと小一時間説教されたのは言うまでもない。



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