氷菓少年は天然少女にかなわない
笑佳が両手で野菜ジュースを持ったまま、楽しそうな笑みを浮かべているのを見て梨久が首を傾げる。



「楽しそうだね」

「うん!だって、みんなの事大好きだから」

「……あっそ」



梨久には理解し難いタイプだが、それなりに慣れてきた自分に軽く驚いた。



春夜がスマホを弄りながら呟く。



「自覚、ないんだろうな」

「なんかいった?」

「なーんも」



梨久の問いかけにあっさり返し、いつもと変わらない笑みを浮かべる。



「そう」



梨久はそれ以上追及する事なく、本日二つ目のおにぎりを口に入れる。



「まじなんも入んないかも……」

「これあげる♪」



今にも死にそうな佐助に笑佳は飴玉を差し出す。



「グリーンアップルサイダー味の!!?」

「CMのりんごおいしそうだったよね」

「さっすがえみ!俺頑張っちゃうっ」

「現金なヤツ」



呆れ口調で梨久が呟き、ふと俊哉の手元を覗き込むと弁当箱の中身が全然減っていない。



「どっか悪いの?」

「いや……悪くないけど、どうして?」

「全然食べてないから」

「あ――今朝、食べ過ぎたせいかもしれない」

「ふーん」



俊哉は半分も食べずに弁当箱をさっさと片付けてしまい、梨久もこれ以上は聞かなかった。



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