氷菓少年は天然少女にかなわない
梨久が一人で歩いていると笑佳が隣に駆け寄って来た。



「……ホント、物好き」

「なんかいった?」

「ううん。早く帰りたいって思っただけ」

「まだ始まってないよ?」



雑談をしていると、あっという間にホールに付き開けようとした時、勢いよく内側から扉が開け放たれる。



「あ」

「すっげー待ってたよ!うっわ、君超可愛いね!名前教えてよ〜」

「………………オレ、男なんですけど」



梨久がむっすーと仏頂面のまま答える。何を、どう間違えたらそうなるんだ、大体アンタと同じ制服着てんだろ、とぶつぶつ言う梨久に対し紺色の髪をした男は笑う。



「ごめんごめん!俺、木更津港平。俺、君と仲良くなりたいな!俺んとこのグループおいでよ!」

「ちょっ」



有無関係なく引っ張られていった梨久を追い、春夜たちも後を追う。



「相変わらずだなあ、あいつ」



一瞬他の生徒はポカンとしていたが、他の先輩が促してくれてようやくホールへみんな入った。



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