氷菓少年は天然少女にかなわない
後ろを振り返った時、ちょっと影のありそうな先輩がいつの間にか背後にいる。



メガネ男子、って言葉がよく似合いそうな。とりあえず飲み物でも勧めてみる。



「よかったら何か飲みますか?」

「じゃあ……昆布茶を」

「……昆布茶、ですか?」



予想外の飲み物を言われ一瞬呆気に取られたが、すぐ我に返り慣れた手つきで昆布茶を用意する。幅広く飲み物に関しては用意しておいて、よかったと俊哉は改めて思う。



「ありがとうございます。申し遅れました、僕は鹿取陽都です」

「ご丁寧にどうも。おれは高田俊哉です。鹿取先輩、元気がないようですが……」

「あ――やっぱりわかりますか」



古風な先輩は一口昆布茶を飲み、それから恥ずかしそうに笑い何故かため息が零れた。



「僕好きな方がいるのですが……全然相手にされないんですよね。やはり、男らしい人が好きなんでしょうか?」

「どうですかね」



俊哉は苦笑する。



ほんと変わった先輩が多いな、と改めて思う。その時、きゃぴきゃぴした女の先輩数名が俊哉の周りに集まって来た。



「俊哉くんの作ったお弁当すごいおいしかったよぅ」

「ポテサラすごくおいしかった!あの高野豆腐、どんな味付けしたの?」

「こっちで一緒に食べようよ〜あ、おじいちゃん俊哉くん借りるからあ」

「……はい」



俊哉はとりあえず頭を下げ、陽都だけが残された。



「ぼ、僕も頑張らないと」



人知れず気合いを入れ直し、昆布茶のお代わりを頼む。好きなものが渋いせいで、あだ名がおじいちゃんなのを陽都は気づいていない。



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