氷菓少年は天然少女にかなわない
「あー佐助ヤバイかも」

「そんな佐助くんが……」



梨久の呟いた一言に笑佳が反応する。さっきまで確かに奇妙な沈黙が流れていたが、今はそんなものどこにもない。



「りっくん、テスト自信ある?」

「当然。普通に授業受けてたら、テスト勉強なんてする必要ないし」



そんな会話を聞いていた周りは、さすが梨久様と思いつつも、顔は青ざめている。



「くう〜あの余裕者め……とっしー助けてっ」

「……重い」



佐助に抱きつかれ俊哉はため息をつく。



ちらりと梨久と笑佳を見遣れば、見る度にざわつく心。



キリリと痛む胸。



この痛みは――



「とっしー?」

「……多分、気づいてた。やっぱり、逃げてちゃ駄目なんだ」

「へ?」

「おれの事より、佐助は自分の心配をしないとな。夏休み楽しく黒宮と勉強したいなら別だけど」

「嫌に決まってんじゃん!こうなったら、最後の悪あがきしてやるっ」



机の中から教科書を取り出し、真剣にガン見をする。



「やれやれ」



俊哉は思わず苦笑する。



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