氷菓少年は天然少女にかなわない
慰労会の花見と悲しい笑顔(執筆)
テスト明けの登校。



「なにこの清々しい空気!超おいしいんですけど」



大袈裟なくらい胸いっぱいに空気を吸い込む佐助。



「まだテストあるけどな」

「も〜りっくんはどうして可愛げない事言うの」

「りっくんって呼ぶな。これで呼ばれるのは、一人だけで十分だ」



肩に腕を回された梨久は嫌そうな顔をする。鬱陶しいって顔をしながらも、払いのける事はしない今のところ。



欠伸をする春夜。



「はるくん眠いの?はいこれ」

「電話でオールナイトしちゃって。俺にくれるの?ありがとう笑佳ちゃん」



ミントキャンデーを貰い春夜はへらっと笑う。



「笑佳、おれのはないの?」



ごく自然に春夜と笑佳の間に割り込む。



意外な俊哉の行動に春夜と梨久だけが気づき、佐助と本人はまったく気づいてない。



「あるよ。はい俊哉くんの分」

「ありがとう笑佳」



笑顔の俊哉。



梨久は視線を外す。自分には関係のない事で、無視をすればいい事なのに。



なのに、心がざわざわする。



「……理解できないし」



自分も、俊哉の変化も。



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