氷菓少年は天然少女にかなわない
そんな微妙な空気を読めない佐助が俊哉に抱きつく。



「今日午前中で終わりだし、花見しよ花見!」

「急だな……おれは別にいいけど。笑佳はどうしたい?」



笑佳は嬉しそうに両手を合わせる。



「いきたいな。ねっ、はるくんとりっくんもいこうよ」



キラキラした笑顔を向けられた春夜は。



「もちろん。俺が女の子からのお願い断るわけないから」

「ありがとうはるくん。ね、りっくんいこ?」



断ろうと思っていたのに。



いつの間にか梨久は頷いていた。



「楽しみだねお花見。簡単なお菓子作って、持ってくね」

「おれも作ってくよ。姉さんに手伝ってもらって」

「お姉さんいるんだあ」

「姉と兄がいるよ。姉さんは大学生で、兄さんは社会人。どっちも八百屋継ぐ気はないから、おれが継ぐ事になってるんだ。安くするし、今度おいでよ」

「うん」



仲よさそうに並んで先を歩いていく。



走る車の音も、鳥の鳴き声も、登校する学生の雑談も、何も聞こえない。



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