乱華~羽をくれた君~【完】
アパートの部屋に着いても、陸さんはあたしの手を離してはくれなかった。
「陸さん・・?手・・離して・・?」
「なんで2人でいたんだよ?」
陸さんは後姿のまま、あたしに顔を見せようとしない。
握られた手は熱く、そこから普段とは違う様子が窺える。
あたしもいつものようにすんなりと言葉が出てこない。
「・・たまたま・・街であって・・」
「あいつから何か聞いたんだろ?」
「・・・ううん・・」
「嘘つくな」
陸さんは振り返ってようやくあたしの顔を見てくれた。
「だから広樹に会わせたくなかったんだよ・・」
「・・あたし陸さんの事、何にも知らないから・・知りたかったの・・」
「おめーには関係ねーことだから・・知らなくていーんだよ」
「関係あるよっ!あたし・・・彼女でしょ・・?」
「は?」
陸さんの眉間がぴくりと動いた。
「でも・・あたしとはお遊びだもんね・・・最初に本気になれないって言ってたし・・・
陸さん、百合さんの事、忘れられないもんね・・・?」
声が震える。
百合さんの名前・・
陸さんの前で口にしたくなかった。
こんな事言いたかったわけじゃないのに・・