乱華~羽をくれた君~【完】
怖くて陸さんの目が見れない。
今、どんな表情であたしを見ているのか、わからない。
その時、ぐいっと顔を引っ張られ、陸さんの顔が目の前にきた。
「・・・俺のことに、これ以上首突っこむな」
陸さんの瞳に光は宿っていなかった。
そしてあたしを床に押し倒すと、荒々しくキスをしてきた。
この前とは間逆の激しいキス。
「・・・やっ・・・」
声を出すことも許さないとばかりに次々と口を塞がれる。
そしてあたしのTシャツを乱暴にめくり上げた。
その時、義父に襲われている瞬間と重なった。
無理やり両手を抑えつけられ、卑猥な目で見つめる義父の目。
しばらく思い出すこともなかったのに、陸さんの行為は義父のやっていることと同じだった。
体が震える。
それに気付いたのか陸さんの手が止まった。
「や・・・やめて・・陸さんはこんな事する人じゃない」
陸さんは掴んでいた手の力を弛め、あたしから離れた。
「…俺はお前が思ってるほど優しい男じゃねーよ・・・」
「・・・え・・・」
「確かに広樹と付き合った方がいいかもな・・・」
陸さんはそう言い、悲しげな微笑みを浮かべた。
その横顔はあたしの知ってる陸さんじゃなかった。
あたし達の間に大きな溝ができようだった。