乱華~羽をくれた君~【完】
103号室。
ドアを開けると陸さんの香水の匂いがした。
ついさっきまでもう二度とここには来れないと思っていた。
「なんだよ?」
陸さんがあたしの顔を見て、不思議そうな顔をした。
「ううん、なんでもない」
義父の話は一切しない。
まるで何事もなかったかのように接してくれる。
陸さんはいつもそうだった。
あたしから言わなきゃ何も聞いてこなかったし、自分のこともほとんど言わない。
陸さんは詮索されるのも嫌いだからするのも嫌いなんだ。
・・・でもあたしは違う。
好きだから知りたいし、わかり合いたい。
何かあれば一緒に悩みたいし、解決していきたい。
・・・あたしが動かなきゃ変わらない。