乱華~羽をくれた君~【完】
「俺、お前に酷い事したのに・・・」
「え?」
「この前、無理やりやっちまおうと思った」
「陸さん・・・」
「そしたら軽蔑して俺から離れてくれるだろうと思って。
今までの女は簡単にできたのに・・・お前にはできなかった」
抱きしめる力を強めていく陸さん。
「ごめん。恐い思いさせた・・・こんなんじゃあの親父と一緒だな・・・」
あたしは精一杯首を横に振った。
あんな男と陸さんは・・・
全然違うよ・・・
いつになく優しくあたしの髪に触れてくれた。
すぐ近くで綺麗な睫毛が揺れている。
そしてそっとあたしの瞼に頬に、唇にキスを落とした。
「・・・あんたになら話せそうな気がする」
「え・・・?」
「オレの事・・・」
・・・あの陸さんが自分から話そうとしてくれている。
今、新しい一歩を踏み出そうとしてるんだ。
それもあたしに向けて。
「うん・・」
あたしは陸さんの腕の中で、陸さんの言葉ひとつひとつを忘れないよう、しっかり胸に刻み込むことにした。