乱華~羽をくれた君~【完】
「・・・く・・・っ・・・」
泣いているようだった。
「・・・あの、何かあったんですか!?」
「・・・百合が・・・マンションから飛び降りて・・・」
ドクンと大きく心臓が動いたのがわかった。
「・・・今どこですか!?」
「・・・一迫総合病院に・・・」
「わかりました、すぐ行きます!」
俺は電話を切り、すぐに単車にまたがった。
広樹と美由紀も一緒に行くと言ってくれた。
・・・俺は不思議と冷静だった。
どこかで嘘なんじゃないか、人違いなんじゃないかという思いがあったから。
・・・そうだ、絶対百合なんかじゃない。
あいつはそんなことするような奴じゃない。
俺にだまって死ぬなんて・・・ありえない。
病院までどうやって辿り着いたかは覚えていない。
景色なんて目に入って来なかった。
ただひたすら・・・
百合じゃない事を願っていた。
病院のロビーに行くと、遠くに百合の母親と父親の姿が見えた。
抱き合って泣き崩れている。
俺はその様子に息を呑んだ。
今更になって体が震えてくる。
「・・・陸、あれ百合の母ちゃん達か?」
「・・・ああ・・・」
「・・・とにかく、急ごう」
広樹が俺の背中をポンとたたく。