乱華~羽をくれた君~【完】
お棺に近づくにつれ、口から飛び出るんじゃないかってくらいうるさい心臓の音。
見せてもらったのは手だけだった。
華奢で小さい手、見覚えのある人差し指のほくろ。
そして・・・俺があげたブレスレット。
俺はその場に立ち尽くした。
鈍器で頭を殴られたような感覚に陥る。
なんで・・・
なんでだよ百合・・・
疑問符だけが頭の中を駆け巡る。
震える手で百合の手にそっと触れてみる。
冷たい。氷のように・・・
それ以外は変わらない百合の手。
百合の泣き顔も怒った顔も拗ねた顔もそして、あの明るい笑顔ももう2度と見ることはできない。
「あの・・・大丈夫ですか・・・?」
看護師がそっと近付く。
その看護師に言葉をかけられ気づいた。
涙を流していたことを。
百合…
お前がいなくなったら俺はどうすればいんだよ。
・・・俺は何か間違えていたんだろうか。
百合を守ってきたつもりだった。
でも結局何も守ってやれなかったんだな。
お前は最後何を考えていたんだよ。
なんで何も言ってくれなかったんだよ・・・