乱華~羽をくれた君~【完】
それから2日後に百合の通夜が行われた。
俺はその2日間の事をはっきり覚えていない。
何を食べたのか、飲んだのか、寝たのか、まるで夢の中にいるような感じだった。
そう、これが夢だったらいいのに。
ガチャッ
勢いよく玄関を開けたのは広樹だ。
制服を着ていた。
「おい陸・・・!」
「・・・おお」
うつろな目で広樹を見ると、心配そうな顔をして俺の側に寄ってきた。
「お前・・・電話もでねーし・・・ちゃんと飯食ってんのかよ!?」
「・・・ああ」
「今日百合の通夜だぞ、行くんだろ?」
「・・・」
「おめーがしっかりしないでどーすんだよっ」
胸倉を掴んで無理やり俺を立たせた。
「・・・わりぃ。」
広樹の腕を振り切り、久しぶりに着る制服に袖を通した。
外は夕日が沈む直前で、その夕日の眩しさに目を細めた。
百合がこの世からいなくなったというのに世界は動きを止めない。
当たり前のように夕日が沈み、暗闇がやってきてそして朝になる。
何も変わらない。
百合がいないという事以外何も。
広樹のバイクの後部座席にまたがり、俺らは百合の家へ向かった。