乱華~羽をくれた君~【完】
しょんぼり顔のあたしに、食いついてくる栞。
「ふっふっふ…奈緒、陸さんに惚れたんでしょ!?でも陸さん、奈緒のこと可愛いって言ってたし~気に入られたんじゃない!?」
「ええ!ありえないよッ!!」
そんなことありえない。
でも今はそんな冷やかしでさえも嬉しくなっちゃう。
あんな素敵な人と話をして握手もできたんだもん・・
陸さんが良い人なんだって事は、あの笑顔からちょっとわかる気がする。
すごく温かくて優しい表情をするひとだったから…
「・・・・・・まじ?・・
・・・・なんであの子が?・・・・
・・・・・・・ありえないよね・・・・」
近くから理香子達の声が聞こえる。周囲の視線は明らかにあたしに向いていた。
「あ・・奈緒、気にすることないから・・
ごめんね、みんないい奴なんだけどさ、ほら、陸さん人気あるから奈緒が握手してもらって、きっとみんな羨ましいんだよっ」
「う、うん…」
栞の学校の友達は、最初からあたしの事を良くは思っていなかったと思う。
特に理香子って人には嫌われているような気がする。
今も睨むように、じっとあたしを見ているし…
でもそんな事より、今は陸さんの事が脳裏に焼きついてしまっていて、忘れることができない。
それが桐谷陸との出会いだった。