乱華~羽をくれた君~【完】
弔問客が次々と百合の家の中へ入っていく。
バイクを停め、家の門をくぐると線香の香りがした。
ふと、玄関のところにいた百合の父親と目が合う。
すると沈痛な面持ちの父親が俺達の前までやってきた。
「あ、百合のお父さん・・・この度は・・・」
「帰ってくれないか」
広樹が頭を下げた瞬間、思いもよらない事を言われた。
「え?」
「悪いが今はあなたたちの顔も見たくない。きっと家内も・・・」
「・・・どういうことですか?」
俺が問いただすと門の外へ出るよう促された。
「百合は陸くんと付き合って変わったよ。良い意味でね」
弔問客には聞こえないよう、小声で話し始める父親。
「だから信じ切ってしまっていた部分はあるんだ・・・」
「・・・どういうことでしょう」
「知らなかったのか?あの子は妊娠していたんだよ」
「・・・え」
目の前が真っ白になる。
・・・俺と百合は一度もそういう関係になったことがない。
「心当たりはあるんだね?」
父親に鋭い目つきで睨まれる。
確実に俺の子供だと思っているようだ。
「・・・はい。すみません」
俺は嘘をついた。
ガッ・・・!!
深々と頭をさげた瞬間、思いっきり顔を殴られた。
「お前・・・百合は・・・百合はまだ14なんだぞ!」
俺を殴った手が震えている。