乱華~羽をくれた君~【完】
その笑顔も一瞬で真顔に戻る。
「・・・恐かったのかもしんねー」
「・・・え?」
「お前の存在が、俺の中でどんどんでかくなっていくことが」
寝転がったまま、両手をあたしの頬に伸ばしてきた陸さん。
その表情は穏やかだった。
「百合に一人で生きてくって約束したのに。もう誰にも本気にはなんねーって・・・俺はそれを破っちまったんだからな・・・」
「陸さん・・・」
「でもお前は素直で、まっすぐ俺にぶつかってきてくれて。そんでいつも俺の側で笑っていた。お前といると心が休まるんだよ」
あたしはただ陸さんの事が心配でそうしていた。
大好きな人だから、いつも笑っててほしいとも思っていた。
陸さんもそんな風に思っててくれたんだ。
「だから恐いんだよ…お前が百合みたいに、俺の前からいなくなんじゃねーかって」
その時あたしは陸さんを抱きしめていた。
自分でも大胆な事してると思う。
でもこの人が愛しくて愛しくてたまらない。
「おい・・・奈緒?」
「あたしはここにいるよ!」
「・・・」
「あたしは・・・陸さんの傍から離れない!絶対に死んだりなんかしない!!」
「奈緒・・・」
「百合さんは・・・きっと悲しんでる。陸さんに幸せになってほしいって願ってるはずだよ・・・愛した人の幸せを願わない人なんかいない・・・」
陸さんの顔を見上げると、目に涙が溢れていた。
「だから・・・陸さんは生きて。精一杯生きて。百合さんのためにも。あたしのためにも」