乱華~羽をくれた君~【完】
陸さんがこの前言ってた。
“解散しよーかとも考えたけど、そんじゃ今いる奴らがかわいそうだと思った”と。
“他のチームにいくくらいなら、乱華で走っててほしい”と。
そして彼らもいずれ辛いことに直面することもあると思う。
でも経験しなきゃわかんないこともあるんだって陸さんは言ってた。
そうだよね、あたし達も死にたいくらい辛い事、苦しい事沢山あった。
でも乗り越えられたんだから。
【神様は乗り越えられない試練を人に与えたりはしない】って前に誰かが言ってた。
陸さんを慕ってきた皆だもの。
きっときっと大丈夫。
いつかちゃんと、何が正しいのかって事に気づいてくれる。
みんなとじゃれ合っている陸さんは、ただの無邪気な17歳の少年だった。
その様子から、彼は今までどれだけ大きな傷を背負ってきたかなんて周りは想像もつかないだろう。
突然、携帯が鳴った。
ディスプレイを見ると知らない番号が表示されている。
不審に思って出なかったが、その番号から何度もかかってくる。
仕方がないので外で話そうと思い、席を立った。
「ちょっと電話してくるね」
「おー」
陸さんは一瞬だけあたしの方に目を向けたが、すぐにまたみんなと話し始めた。