乱華~羽をくれた君~【完】
そんな日々も一ヶ月を過ぎた頃・・・
学校から帰宅した私は、家の玄関で立ち尽くしていた。
いつも帰りが遅いはずの義父の靴がある。
出かけているのか、母の靴はない。
携帯の時計を見るとまだ18時。
二階に行って鍵をかけてしまうか、外で時間を潰すか・・・
その時、リビングの戸が開いた。
全身が凍りつく。
「奈緒か。おかえり」
その声はあたしの体を一瞬にして動かなくさせた。
奇妙な笑みを浮かべた義父が、近寄ってくる。
「お・・お母さんは?」
そう答えつつ、じりじりと義父との距離を遠ざけようとした。
「同窓会で今日は遅くなるそうだよ。奈緒、夕飯できてるぞ、今日はお前が好きなオムライスだ。」
同窓会・・
母が遅くなることをわかっていれば、あたしだってもっと遅く帰ってきたのに・・
「い、いらない・・おなかすいてないから・・」
「そんな事言わないで。早く来なさい。」
義父はあたしの腕を掴むと、無理やりリビングの方に連れ込もうとした。