乱華~羽をくれた君~【完】
胸が押しつぶされそうになる。
陸さんは一体どんな気持ちで聞いてるんだろう・・・
「情緒不安定な様子だったから心配で色々訪ねてみたんだが・・・彼女はあまり話してくれなくてね。ただ『陸を守らなきゃいけないんです』とばかり言われて・・・必死だったよ、君を父親から守ることに。辛かったはずだ。君を手放す時泣き崩れてしばらく動けないでいたからね・・・私達も気の毒で見ていられなかった。だからね陸くん、君は捨てられたんじゃないんだ。お母さんは君を守るために仕方なく施設に預けたんだよ。」
それでも陸さんは何も言わず俯いたまま。
佐々木さんは一つため息をつくと、あたしに紙とペンを貸してくれと言い、受け取ると何かを書いて陸さんに渡した。
「彼女の働いている歯科医院だ。平日の昼間に行くといい。あと俺の番号だ。何かあったらいつでもかけてきなさい。」
紙には佐々木さんの電話番号と歯科医院の住所と、【神崎】という名字が書かれていた。
陸さんのお母さんの名字なのだろうか。
「お邪魔したね。でも元気そうでよかったよ。また会おう」
玄関先であたし達に笑顔を向ける佐々木さん。
「はい。俺も会えて良かったです」
「ありがとうございました。お気をつけて」
佐々木さんが帰ったあと、陸さんは思いっきりソファに倒れこんだ。