乱華~羽をくれた君~【完】
陸さんは単車の横にかけていた黒いヘルメットをあたしにかぶせた。
「また肩もみみたいにつかむなよ?」
あたしがコクリと頷くと、陸さんはふっと笑いながら単車にまたがり、ハンドルを握った。
単車が発進すると、体が後ろに引っ張られたので、あたしは慌ててしがみついた。
まだぎこちないこの後ろ座席も、いつか慣れる日がくるのかな・・・
陸さんの後姿を眺めながらそんなことを考えていると、海岸沿いからいつのまにか、街中に入っていた。
夜風はすごく心地よい。
20分くらい走っただろうか、あたしの家からもそんなに遠くはないと思う。
着いたのは古びたアパートの前だった。
でも外から見る限り、家族で住めるような広さではない。
ここが陸さんち・・・なのかな?
あたしがキョロキョロしていると陸さんは単車から降りて振り返った。