乱華~羽をくれた君~【完】
「お邪魔・・・します・・・」
緊張しながら中に入ると、お香の香りがした。
部屋の広さは1kでロフト付き。
車やバイクの雑誌が山積みになっている程度で物が少なく、生活感がない部屋だった。
チームの旗が壁一面に貼られていて、コルクボードには沢山写真が貼ってあった。
写真の中で陸さんっぽい若い男がマスクをして単車に乗り、仲間とピースしている。
「これ・・・陸さん?」
「ん?あーそれ昔のだけど」
陸さんはコーヒーを入れてくれていた。
黒いソファーに座り、部屋をキョロキョロしていると上から頭を押さえられた。
「あんまキョロキョロすんなってッ」
「あ、は、はいっ!」
コーヒーをあたしの前に置くと、陸さんはソファーにドカッと勢いよく座り、TVを付けた。
今自分がこうして陸さんちにいるのが嘘みたい。
これは夢で、明日になったらまたいつもの日常が始まったりして・・・
そうだったらヤダな・・
沈黙が続く。
緊張してカップを持つ手が震え、コーヒーを手にこぼしてしまった。
「あつッ・・」
「・・なにやってんだよッ!?」
陸さんは、あたしをキッチンまで連れて行き、手に水をかけてくれた。