乱華~羽をくれた君~【完】
ちゅっ
・・・なにが起こったのかわからない。
温かくて柔らかくて。
ふわりと優しいキスだった。
陸さんの香水の香りがする。
「お前さぁ・・目ぇくらい閉じろっ」
陸さんの声にハッとした。
あたし…今陸さんとキス‥
したんだよね‥!?
何度も義父に、無理やりされたキス。
今は思い出したくもないけれど、我に返るとどうしても思い出してしまう。
でも、それとは全く別物だった。
気持ちが入っているキスは、こんなにも胸が熱くなり、胸の鼓動を早くさせる。
あたしはこの時、初めて本当のキスを知った。
陸さんは、掴んでいたあたしの手を離し、いつもの意地悪な笑みを見せた。
「大丈夫?」
「あっ!う、うん」
「動揺してんの??」
「してないよッ」
陸さんはニヤニヤしながらまた顔を近づかせてきた。
恥ずかしすぎて、顔が熱くなってくる。
陸さんのキスひとつでこんなにも幸せな気持ちになるなんて…
さっきまであんなに不安で落ち込んでたのに。