乱華~羽をくれた君~【完】


ちゅっ


・・・なにが起こったのかわからない。



温かくて柔らかくて。

ふわりと優しいキスだった。



陸さんの香水の香りがする。



「お前さぁ・・目ぇくらい閉じろっ」




陸さんの声にハッとした。



あたし…今陸さんとキス‥


したんだよね‥!?




何度も義父に、無理やりされたキス。


今は思い出したくもないけれど、我に返るとどうしても思い出してしまう。


でも、それとは全く別物だった。


気持ちが入っているキスは、こんなにも胸が熱くなり、胸の鼓動を早くさせる。

あたしはこの時、初めて本当のキスを知った。



陸さんは、掴んでいたあたしの手を離し、いつもの意地悪な笑みを見せた。



「大丈夫?」



「あっ!う、うん」



「動揺してんの??」



「してないよッ」




陸さんはニヤニヤしながらまた顔を近づかせてきた。


恥ずかしすぎて、顔が熱くなってくる。


陸さんのキスひとつでこんなにも幸せな気持ちになるなんて…


さっきまであんなに不安で落ち込んでたのに。



< 81 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop