乱華~羽をくれた君~【完】
あたしは動揺が隠せなかった。カフェオレが入っていない、氷だけになったグラスを何度も何度もストローですすった。
元カノが・・
百合さんが・・
亡くなってるなんて・・
そんな・・・
亡くなった人なんかに勝てるわけがない・・
百合さんはずっと陸さんの中にいる。
そして決して消えることはない。
忘れられるわけがない・・
だから誰にも本気になれないなんて言ったんだ・・・
「陸さんは・・本気であたしと付き合ってるわけじゃないんです・・」
「え?」
「付き合う時・・・本気になれないけどそれでもいいならって事で付き合ったんです。ちょっとおかしいですよね…」
うまく笑えない・・・
声が震える。
どきどき
どきどき
鼓動がうるさいくらい聞こえる。
心のどこかでいつも不安だった。
どうでもいい女だから肝心な時、何も言ってくれないんだって思ったりもした。
いつ飽きられるんだろうって、いつ捨てられるんだろうって思うと恐かった。
でもね、信じたかった。
ネックレスをくれたあの晩の優しいキス。
あれは確かにあたしに向けられたものなんだって事。
このネックレスだけが唯一の彼女の証となるものだったのに・・
なんの意味もないものになっちゃった。
いくらあたしが陸さんを大好きでも百合さんには一生勝てるはずがないのに。