乱華~羽をくれた君~【完】
広樹さんは眉間にしわをよせ、あたしの顔を見つめていた。
「陸は遊びで奈緒ちゃんと付き合ってるってこと・・?」
「・・・そういうことですかね」
「あいつ・・・ふざけやがって」
拳を強く握り締めたのを見て、あたしは慌てて言った。
「あ、あたしもそれで良いって言ったんです!!」
「奈緒ちゃん・・・」
「あたし今親と喧嘩して家出中で、どこも行くところなくて・・
陸さん、優しいからずっと面倒見てくれてるんですよ。
だからあたしも利用させてもらっちゃってるっていうか・・・」
思ってもない言葉が口からあふれ出てくる。
「奈緒ちゃんは本当にそれでいいの?」
「・・・はい」
ワガママ言ったらきっと面倒くさい女だって思われて、振られるかもしれない。
今までの陸さんの色んな表情が頭に浮かんだ。特に笑顔。
意地悪な笑顔、優しい笑顔・・・
陸さんとの楽しい日々を終わらせたくない。
だからこのままの関係でいるしかない。
涙が出そうになったけど、ぐっと堪え、下を向いた。
でも広樹さんにはお見通しのようだった。
「もう出ようか・・送るから帰りながら話そう?」
そう言って、広樹さんは自分の鞄と、あたしの鞄を持って立ち上がった。
あたしは手で涙を拭き、俯きながらカフェを後にした。