乱華~羽をくれた君~【完】
広樹さんの後ろを歩きながら、しばらく声を殺して泣いた。
陸さんちまでの道のりはそう遠くない。
陸さんに、泣いたのがバレないようにしなきゃいけないのに、次々とあふれ出てくる涙。
広樹さんはそれに気づいていたのか、歩くペースを遅くしてくれている。
人通りの少ない坂道に差し掛かったとき、広樹さんは急に後ろを振り返った。
「奈緒ちゃん」
「・・え?」
涙で化粧が崩れている顔を見られたくなかったので、咄嗟に下を向いた。
「オレさ、今日奈緒ちゃんに色々話した事、後悔してる。
奈緒ちゃんに辛い思いさせるってわかってたのにさぁ・・」
あたしは顔を上げて広樹さんを見上げた。
広樹さんも辛そうな顔をしている。
「・・そんな。あたしが話してほしいって無理に頼んだんですから・・
いつかは知ることだったし・・いいんです。
あたしも無理に頼んでおきながら泣いちゃってすみませんでした・・」
広樹さんに笑顔を見せた瞬間、肩を掴まれて抱きしめられた。